JINの平和演習ノート

世界平和のこと、政治のこと、経済のこと、何か少しでも世の役に立ちたくて綴ります。翻訳者を目指していますので、ニュースの翻訳も交えます。

戦争は見えない

三崎亜記さんの小説『となり町戦争』を読んでいていろいろ考えさせられるところがありました。少しだけ。

『僕』の住む町が、となり町との戦争をすることになった、というすごい設定の小説です。戦争と言っても、街角に戦争らしい痕跡を見ることができず、町はいつもの町のまま。ただ、役所の広報誌に『戦死者○○人』と掲載され、わからないままに戦争だけが進んでいく…。そんな僕が役場に急遽採用されるあたりから話が始まります。

この小説の中で心に残る文をいくつか引用します。

「戦争というものを、あなたの持つイメージだけで限定してしまう
のは非常に危険なことです。戦争というものは、様々な形で私たちの
生活の中に入り込んできます。
あなたは確実に今、戦争に手を貸し、
戦争に参加しているのです。どうぞその自覚をなくされないように
お願いいたします」

今僕が出遭っている戦いは、そのどちらにもカテゴライズされない、
予測もしなかった形で僕を巻き込んでいる。この複雑化した社会の
中で、戦争は、絶対悪としてでもなく、美化された形でもない、
まったく違う形を持ち出したのではないか。実際の戦争は、予想
しえないさまざまな形で僕たちを巻き込み、取り込んでいくのでは
ないか。
その時僕たちは、はたして戦争にNOと言えるであろうか。
自信がない。僕には自信がない。


 …もうすでに、そういう時代になっているのではないかと思いました。一般には現在の日本が事実上の戦争状態にあるとは考えられていません。でも、それは単に身近で撃ち合いをしていないという話かもしれません。先の大戦(太平洋戦争、あるいは大東亜戦争)の場合は日本国内も戦場となりすべての国民が戦争を実感したことでしょうが、それ以前の例えば第一次世界大戦などはどうだったのでしょうか? 兵は出ました、でも多くの日本国民が戦争を実感したのでしょうか。ドイツ人捕虜が抑留されてくる場所を別にすれば、国内で戦争を実感できていなかったのではないでしょうか。

 米国のブッシュ大統領は"War on terror"と表現して戦争状態にあることを認めています。日本もそれに追随しています。今までになかったカテゴリーの戦争として『テロとの戦い』を捉えているとすれば、今の日本は戦争状態にあるとも言えます。でも、多くの国民に戦争状態であるとか、戦争に加担している可能性があるとか、そういう認識はありません。それも無理からぬことです、何しろ近くで銃弾が飛び交っていないのですから。

 やはり私たちは暗い気持ちになるけれど戦争の真実をよく知らなければなりません。戦争や社会不安を払拭できるのは、結局のところ人間の智慧であるように思います。

 さいごに小説からの引用をもうひとつ。ガツンときますよ。

 僕たちは、自覚のないままに、まわりまわって誰かの血の上に
 安住し、誰かの死の上に地歩を築いているのだ。

テーマ:戦争・原爆 - ジャンル:政治・経済

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コメント

日本という国の経済発展は朝鮮戦争の上に成り立ったとのことです。
その高度成長期以降に生まれた私たちは、当然そのことを意識することなく成長して、その利益によって育てられてきたともいえますよね。
その後もベトナム戦争、イイ戦争、湾岸戦争などなど日本の最大の相方は常に戦争に係わり日本も少なからず協力してきたことでしょう。
戦後生まれの私たちも、生まれながらに常に戦争にかかわって生きてきたのだと思います。
その国が戦争は過去の話などといえば反感を買うことは必死です。日本は戦後60年その状態を続けているのですね。

  • 2006/02/07(火) 23:56:29 |
  • URL |
  • 駆け出しの百姓 #-
  • [編集]

駆け出しの百姓さんコメントありがとうございます。市井の多くの人々は意識して戦争に手を貸すわけではありません。政治や経済の方向性のおかげで、結果として知らずのうちに戦争に手を染めているというのが実情です。我々民衆は少しの智慧を得て、小さな力を集めて政治や経済を動かす大きなうねりを作らなければならないと感じます。

  • 2006/02/11(土) 23:27:53 |
  • URL |
  • JIN #/l.Zga02
  • [編集]

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